磁気帯びで進むってどういうこと?
1日1分進むので修理に出したが、磁気帯びしてたと言われた。
磁気帯びで遅れると聞いたことがあるが、進むとはどういう現象ですか?
機械時計の仕組み
機械式時計の精度は “テンプ” の微妙な往復運動で保っています。
秒針の1秒の速さを ”テンプ” が往復運動(8振動なら、4往復)で調整をしています。
テンプ内に設置された “ひげぜんまい” が伸び縮みすることで円盤のようなテンプが、同じ方向で回転するのではなく、往復運動することになります。

テンプの往復運動
- ガンギ車からの回転でアンクルが引っ掛かりテンプが回転する。
回転すると『ひげぜんまい』が縮んでいく。

- 『ひげぜんまい』が縮まって回転が止まる。

- 止まった勢いで逆回転し、『ひげぜんまい』が伸びて、テンプが止まる。

遅れたり進んだりする訳
精度を司るのは、“ひげぜんまい”です。
規則正しく伸び縮みすることで、テンプの往復運動(通常280度~300度くらい)が安定しますが、磁気を帯びることで細いひげぜんまいが引っ付いたり絡まったりするようになり、左右規則正しい伸び縮みが出来なくなります。(片振り状態)
テンプの往復運動する振り角が、左右で大きくなったり小さくなったりすると速くなったり遅くなったりします。


磁気とは?
磁気とは、分かりやすくご説明申し上げますと磁石の力と言えます。
スマホ、iパッド、パソコン、かばん開閉磁石、電化製品(電子レンジ、テレビ、冷蔵庫など)、磁気健康器具(磁気ネックレスや磁気枕など)などが10cm以内にあると影響します。
また、よく分かりにくいところでは、会社での机の上に置かれる場合にパソコンや配線、コンセント設置で使われる磁石の影響で、磁気帯びになることがあります。

残留磁気
止まったり、進んだり、遅れたりの理由は、内部を見て初めてわかります。
修理においては、まずテンプ部品内の残留磁気を測ります。
通常、磁気の影響があるのは残留磁気値0.3mTあたりからですが、それ以上の強い磁気に遭遇されている場合は遅れ進みに顕著に現れます。
なお、JIS1種の耐磁時計であれば、おそらく磁気を発するものと5cm離せば大抵問題はなく、非耐磁であっても10cm離せば問題ありません。
脱磁後、磁気を発するものを特定出来ない限り、脱磁処理、洗浄をしても再度同じ磁気と遭遇すればまた 同じ様なことが起こってしまいます。
原因は何かを探ることも重要なことです。
