クオーツとメカニカルの『ハイブリッド』
クオーツとメカニカル、両方の技術と製造工場を持ったセイコーだからこそできたものです。
他メーカーでは作れないものと思われます。
グランドセイコー、クレドール、プロスペックスの高額品で商品が出ています。
精度は?
通常、メカニカルはグランドセイコーで、静止精度、日差+5秒~-3秒です。
スプリングドライブはクオーツの精度ですから日差は±1秒以内、月差が±15秒以内です。
仕組み
ぜんまいの解ける力により、ローター(磁石)が回転します。
ローター(磁石)が巻かれたコイルの上で回転することによって、磁界が発生し、極小さな電力を発生させます。
この極小電力でIC、水晶振動子が働き、電気信号を作り出します。
ICは電気信号とローターの回転速度を検出し、ぜんまいの解ける力で回転しているローターのスピードに電磁ブレーキをかけ、1秒間に8回転の速度になるように調整します。
この結果、クオーツ並みの精度、月差±15秒が実現しました。
電磁ブレーキ
自転車のライト、タイヤと接触させて回って点灯するライトですが、ライトとタイヤ、接触して点灯したら漕ぐのが重くなりますがあれが電磁ブレーキです。
そういえば、重くなりますよね。
その電磁ブレーキでローターの回転数を秒針が1秒たる正しいスピードを維持するようにします。
回ろうとするところを電磁ブレーキで抑えるので、針はスィープ運針になります。
小さな電力
ローターが回転して発電するような、ごく小さな電力で、クオーツを呼び起こした上、針を制御するなんてとんでもないことだと思います。
どれくらいの電力かというと、25nW(ナノワット)です。
ナノは1/10億ですので、現実的ではないですが、どれくらいスプリングドライブを集めたら、100Wの電球が点くか個数で計算すると、40億個必要ということになります。
それほど小さな電力でクオーツを目覚めさせるなんてことは、普通は出来ないんですが、セイコーエプソンだからできたと言えます。
小さな電力を発生させる技
その25nWを発生させるのもものすごい苦労があったようです。
普通クオーツで使われている巻かれたコイルは、もともとそこに電池が入っていますので、とくに発電させる必要がありません。
あくまで電流を磁力線に変換するためのものです。
だからコイルは機械で雑に巻かれるのですが、スプリングドライブはこれで発電させますので、きめ細かいコイルが必須で、きれいに巻かないと発電も起こさないので、半分手で誘導して巻いたと聞いています。
機械ではこんな繊細な巻き方は出来ないとのことです。
またステータにも損失の少ない磁性材を使っているようです。
持続時間
3日巻き、72時間持続します。
巻き上げもいいんので、1日着けているとほぼ巻き上がったりします。
スプリングドライブとメカニカルとどちらが お勧めか?
どちらも逸品でどちらもお勧めしたいと思いますが、どこに魅力を感じるか、皆さんがご判断頂くというところではないでしょうか?
自転車のような人間らしさや芸術品と感じさせられるのはメカニカルですし、スマートに感じられるのはスプリングドライブかと思います。
一般モデルの持続時間は同じ72時間、精度はスプリングドライブが勝ります。
機種や構造によって違いはありますが、部品点数は、メカニカルが200個~300個。
スプリングドライブは400個以上になります。
大きさは?
大きさについては、こちらも種類や構造によって違いますが、部品点数の多いスプリングドライブが若干大きめと言えるのではないでしょうか?
衝撃に強いのは?
あくまで個人的な意見ですが、メカニカルのテンプやアンクルといった物理的な脱進機に比べて、スプリングドライブのトライシンクロレギュレーターは非接触なので姿勢差はありませんし、衝撃にも直接ダメージを受けることはありませんので、衝撃に特化して比較するとスプリングドライブに軍配が上がるのではないでしょうか?